ケリーの公式

投機家ラリー・ウィリアムズが相場で最初に用いて、前代未聞の成果を上げたのが、ギャンブルにおける最適なベットの量を決定する「ケリーの公式」である。
そのケリーの公式を仲間の数学者のラルフ・ビンスが改良したのが「オプティマルf」という公式である。
ラルフは資金管理の著作で有名になりファンドマネージャーとなるなど成功している。

これに最新の金融ポートフォリオ理論や行動心理学を組み合わせれば勝てるのではないかと、みんな考えるのだが、なかなかそうは行かないようだ。
なんというか、演繹的、合理的な手法の現実的問題への応用の限界を感じる。
うまく表現できないが、「確率」という言葉、概念、方法論の事象に対する説明の限界という感じだ。

簡単にいうと資金管理の方法は、まず、一定の勝率、最大損失を要求していて、これがないと次に進めないのだ。
実際問題として、勝率や最大損失を正確に決められないし、決められても、資産の増減が激しすぎると思う。

そもそも、IQが高く天才集団のいたファンドが破綻していることでも解る通り、なかなか「最適解」を求めるのは難しい。
ラルフの実際の投資の実績にしても、よくわからない。

実績でいえば、経済のことを深く理解して投資するタイプや、自分の裁量で相場状況や投資家心理を読んで投資するタイプの方がパフォーマンスが良いような気さえする。
問題は、これらの「投資法」は言語化、システム化ができないので、客観的な評価が非常に難しいということがある。
例えば、ある年に当たったが、それがまぐれか、実力かが分からないということである。
だが、長年のパフォーマンスを見ると、やはり、なにか経験に裏打ちされたものがありそうである。

話がだいぶそれてしまったが、資金管理の公式に当てはめる投資法は、プラスの期待値を持たなければならない。
もし、持っていなければ、必ず破産する。
そして、つねに機能するシステムはないと言われている。

単に過去データから統計を取るだけでは、状況が変わった時に対応できなくなる可能性がある。
そこで、状況が変わったと認識できるころには、破産しているという難しさがある。
資産の増減を管理して、必要なときに運用を止めるなどしなければならないが、
どんな勝率でも、連敗する確率は一定程度あるわけで、そこが致命的なドローダウンになるのかどうかは、表面的な議論では決して分からないのである。