フィクションから迷信が生まれるとき。

昨日だったか、テレビのバラエティー番組で、イギリスの心理学者だか心理トリックマジシャンだか知らないが、兎も角、色々と大掛かりな心理実験をするので有名な御仁を紹介していた。
番組で、電光掲示板の部屋に人々を閉じ込め、「ある行動」を取ると部屋から出られて賞金が得られるという実験を行った。
実際にはランダムに点数が入って、電光掲示板の数字が上がっていくのだが、人々は自分の取った行動の結果として点数が入ると思い込んでいるので、点数が入る法則を必死になって解明しようとしていた。
ところが、部屋の天井部分に「この実験開始後5分後にドアを開けると、賞金が入ります」とデカデカと書いてあったのに、点数の謎を解明しようと躍起になっていたので、気がつかなかったということだ。
同じような趣旨の実験を鳩を対象として行った場合も、鳩は自分の行動で餌が貰えると認識しており、色々な行動を試したと言う。
私が読んだ本には、猿の脳に電極をつけて、餌をランダムに与えたところ、一番活発に脳が働いたことが書いてあった。
猿はボタンを押すなど、なんらかの作業をすると餌が貰えるのだが、その法則になれてしまうと、飽きて刺激が少なくなるのだそうだ。

色々と書いてしまったが、相場で儲けるといった場合も、このような思考にハマっているのではないか。
例えば、あるテクニカル指標があって、それがどうして機能するのか、などと延々と考え続ける。
また、株価が上がる法則はなにか? その理由は? また、どういった行動を取るのか? といった分析。
さらに、そういった物を一切信じないで、テクニカルに動くと思った人の行動を見て自分の売買を決めるといった手法。

このような諸々のことが全てインチキだとは思わないが、全くのカンで行うのも恐ろしすぎてできないだろう。
カンで売買を行うと、つい規律を乱してしまい、損切りができなかったりするからである。

デイトレーダーなどで、考える時間もなく、素早く売買しなければならない人もいると思うが、
自己勘定で行っている場合は、他人に説明する必要もないので、一応売買の目途はあって、柔軟に行っているのだと思う。

また、反対に、システムで移動平均などのテクニカル指標に忠実に売買することも行われているらしい。
それで自分が実際にやってみて本当に儲かるかどうかの保障は一切ないが、シミュレーションを行ってみると、
条件によっては確かに儲かることもあるようだ。
ただ、システムでこまめに売買するとスプレッドや手数料、税金などのコストがかかる上に、相場の状況が変化するので、全自動で常にプラスのシステムというのは無いとされているようだ。

結局は確実性がない、ということが、相場の立つ意味なのだから、当然の帰結と言えるかもしれない。
ある商品が幾らで幾つ売れる、だから、数年後にはこうこう、こうなる云々。
だから、先に材料を買い占めれば儲かる、という投機的な行動を考えるとする。
実際には、商品が思ったほど売れなかったり、材料が安くなってしまったりすることもある。
そういった懸念があるので、材料が上がるにしても、一気にあがるということはない。
また、材料が思惑通りに騰がったにせよ、商品を作って売る側が高いコストに嫌気がさして、
製造を中止してしまい、在庫を抱えた側も買い手に困るということも考えられる。

いま安倍ノミクスで買われた株やドル円も、一体全体どこが正しい値段なのか、といったことは、誰にも解らない。
ある程度、理論的で客観的な説明のされうる経済についてもこれである。
ましてや、そういったものをネタにした相場で儲ける方法に、厳密な理論をあてがうのは、ある種馬鹿げたことかもしれない。
一方で、相場心理などを神秘的なものだと言って煙に巻くような語りもときどきネットなどに散見される。

聖書のなんかの言葉でもないが、「何が正しいのか、正しくないのか見極める知恵」が、ないのである。
だから、見分けがつかない。

ある意味、科学にせよ、歴史にせよ、「こうだ」と推測するのは、それ自体では客観的な裏づけがない段階で、「あとから」計算、データ、証拠、実験などで確かめるのである。
だからその方向性を誤ると、成果は得られないかもしれないが、方向性自体が正しいか間違っているかは、もう、感性の世界ではないだろうか。

何かが正しいと直感する。
何かを理解していると直感する。

間違っているかもしれないし、うまく説明できない。

さらにそこに、信念が加わらないと、行動に移すことはできない。

なので、他の人がその直感した人と同じ努力をする、ということは、容易なことではない。
そもそも、商品を作ったりして真面目に働くのが嫌だから先物を買ってやろうという魂胆で相場に入っているのだから、自分が理解できないし、無駄になるかもしれない努力を惜しむのは当然過ぎる位当然である。